秋の風情にふさわしい本格的な油絵展。東京でもなかなか見られない。まして地方ではめったにない機会です。世田谷美術館の酒井館長の特別なご配慮で実現しました。洋画を描いている作家や、熱心なファンがずいぶん遠方から見えています。3時間ぐらいじっくりと作品に向き合っている来館者もあります。
向井潤吉展で、こんな一点が。
戦前にパリへ留学。ルーブル美術館で模写。あのゴッホも、ミレーの油絵を何点も模写しています。
フランスなど欧米の超一流の美術館では、画家をめざす若者をとても大切にします。国宝級の名作をその前で模写を許可しています。東洋からやってきた無名の若者に対しても。向井潤吉もその一人。
ミレーの作品は小さなものですが、精緻な模写を見ただけで原画の素晴らしさがわかります。もちろん模写もすばらしいですが。
併せて富山市中央通りのギャルリ・ミレーも見ていただいて比較してみることも、おすすめします。これはすべてホンモノです。北陸銀行の協力で生まれた小さな町なかの美術館。わざわざ新幹線で、東京からこれを見るだけのために観光客がやってくる、中身の濃いスポットになるでしょう。
ミレーといえば、山梨県立美術館が先達ですが、富山市のギャルリ・ミレーには「羊を刈る人」という世界的な名品が飾られています。
向井潤吉の自宅が不審火で、数多くの戦前の模写が消失。有名な晩鐘なども。この作品は、難を逃れた貴重な模写です。