館長の部屋

石崎光瑤の大作屏風「鶴図」の寄贈を受ける

南砺市立福光美術館に、新しい宝物が加わった。前館長の佐々木光三さんへ兵庫県姫路市の元実業家、前田剛さん(83)から一通の手紙が届いた。15年前、石崎光瑤没後50年展が開かれたおりに、「鶴図」六曲一双の屏風が出品された。その大作をしかるべき場所に飾っていただければとの内容である。 財政が厳しい時節がら、買い取りはなかなか難しいのではないかと佐々木さんが電話されたところ、いや、寄贈したいとの意向だったという。その手紙を美術館へ持参されたので、館のスタッフが集まり当時の図録で作品の確認をする。早速おかきを手に姫路へ向かった。

元材木商を営んでおられた前田さんは、姫路市の青年会議所の理事長もされた声望家。駅まで自ら運転されて迎えていただき恐縮する。立派なお屋敷の奥の部屋で作品を拝見する。父君がある伝手で入手されたものだとのこと。

予想より大きく、ずっしりと重い。屏風を少しずつ広げると、金箔の表具に光瑤スタイルの裏箔の絹地に描かれた、大ぶりの鶴の群れが飛び出した。思わず息を呑む迫力である。支える手が震えた。100年近い年月を経ながら、つい最近描かれたかのような、保存状態に感動を覚えた。しばし、奥さまとも鑑賞しながら、ご主人の若き日の戦争体験などの苦労話を伺う。

この広大な屋敷を引き払い、神戸の御子息のもとで暮らすことになり、保管する場所がないし、この際この作品をぜひ多くの皆さんに見ていただきたいとのこと。館の所蔵する名品「燦雨」が、この名品を呼び寄せたのだと直感した。机の上には、佐々木館長からの出品証明書と、感謝の手紙が置かれ、その当時の展示がとてもすばらしかったと、昨日のことがらのように話された。前館長の誠実な人柄と、絆が今回の慶事に実を結んだことになる。諸手続きを済ませ、副館長が丁重に受け取りに出向き、現在は常設展示場に落ち着いて華麗な光彩を放っている。光瑤さん30歳ころの気迫が伝わる。

 

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